2010年7月22日木曜日

続・嶋村さんの工房

 前回に続きまして、ノミ鍛冶嶋村さんの工房からの報告です。1992年9月5日の撮影です。夕方おじゃましたところ焼き入れが始まりました。カメラを持っていた私は撮影させていただきました。迷惑だったと思いますが今では撮っておいて良かったとおもいます。  焼き入れは火や赤めた鉄の色をみるため,日没後におこなわれます。色温度という言葉がありますが、赤めた鉄の色で温度を判断します。
写真1
 写真1 : 焼き刃つちを焼き入れする刃物にぬって乾かしています。もう火床に火が起きています。手前がお父さんの幸三郎さん、奥が息子さんの清忠さん。お互いぶつぶつ文句いってます。だいたい居職の親子は見た目に仲がわるいです。うちもそうでした。たがいに遠慮がないからでしょう。
                写真2
 写真2 : 火床の具合をみています。まだ電灯がついています。右膝のすぐのところに金敷があります。金敷は土間から出ている部分が全体の5分の1ほどです、下は埋まっています。プラスチックのたらいは焼き入れの終わったものを入れておくためのものでしたっけ。アルミの鍋は焼き入れ用の松炭の容器で、そのフタのあるあたりに水槽が埋けてあります。
              写真3、4
 写真3,4 : なんどやっても同じ軌道で水槽の中へ、ピュルピュルゴポゴポシュワー、同じリズムです。熟練のわざです。水槽の上でいったん静止しているのがわかります。左手は電動風車のスイッチを調節し、右手はハシをもち、焼き入れする刃物をつかんでいます。
 嶋村さんの作る刃物の最大の特徴は永切れするということです。これは使い手にとってありがたいことです。そのわりには安かったのです。コスト パフォーマンスが高いヘビーデューティーな道具らしい道具です。
 私は自分の使う刃物は確保できましたが、これから木工をはじめる方は嶋村さんのような鍛冶屋さんが少なくなっていくのでたいへんです。
 熟練するまでに時間のかかる従業員をかかえた事業主には減税するなりしてほしいものです。車を買い換えるののどこがエコなんでしょうか。そんなことに減税する真の目的は?