段ボール箱一つ分の木工具をもらったんですが、その中でこのマサカリは研いだら質がよかったので使うことにしました。関東型の小ぶりなマサカリです。
(140匁 ≑ 523g)
ヒツ穴の手元側が開いてしまっているようなので○の部分を叩いてすぼめました。
反対側は叩かれ、まくれていたのでタガネを入れて叩きました。鍛接面が剥がれそうな気配になったのでほどほどにしました。
ヒツ穴の入り口のバリをとって、気持ち広げました。
どうやら、柄を引き通せる穴になったようです。
柄を手元の方から削って、じょじょに先の方へ刃が入るようにしていきます。
完成です。片手使いのマサカリです。
三軒茶屋の土田一郎さんが鍛冶屋の國弘のお宅で見たという、初代國弘(田中和多吉)が明治初期に作った三寸の廣ノミのことが以前から気になっていました。土田さんはそのノミを借りて千代鶴是秀のところへ行って見せたそうです。千代鶴は、初代が横座で二代が先手(さきて)で作った物だ、と言い切ったそうです。二代目というのは國行のことでしょうか。千代鶴は焼きの入ってない生の状態で國弘家に伝わっていたそのノミに、焼きを入れましょうか?と土田さんに言ったのですが、いくら何でも借りてきた物ですので、そのまま國弘家に返したそうです。
どうにか可視化したかったので土田さんの記憶をもとに木型で復元しました。
おあつらえ向きのヒノキの木っ端がありました。右のノミは現代のハイスのノミ。
エナメル塗料の実験も兼ねました。絵画材料のアルキド樹脂を使ったのですが、乾きが遅すぎて使い物になりませんでした。促進剤の類もためしてみたのですがうまくいきません。これは次の課題として、結局使い慣れたハンブロール社の塗料を使いました。
下地の塗装が終わった時点で、タガネで切り銘がしてあったというその「天」の字を土田さんに思い出して書いてもらいました。「天 國弘」の「天」です。
これは國弘の刻印。
できました。
このようにハガネは肩のアールの下端までしかはいってなかったそうです。はじめてノミにハガネを首のつけ根まで貼ったという國弘ですが、それを覆す先祖返りをみせています。
コミは初代國弘の時代特有のオベリスク型にしてみました。