2012年8月23日木曜日

彫刻刀の研ぎ(クセ物の研ぎ)

これらは私が彫刻によく使う刃物です。
彫刻用に刃先を直線に研いだ刃物は、ほとんど使いません。
刃先を曲線に研いだ「クセ物(曲物?)」と呼ばれる範ちゅうの刃物です。

中砥です。上の左の画像は中砥と、それ専用のツラ直し用の中砥。
出来るだけ単純化して砥石の数を最小限にしてます。
すべてをこの中砥の表裏2面でこなしています。
表裏、浅めと深めの2面です。縦方向は凸にしてます。
縦方向に凸にする意味は、中砥で刃物をえぐれさせて研ぐ迅速研磨法ではなく、中砥のツラ直しの頻度を少なくするためです。

左は仕上砥石、こうやって使うには幅の広い仕上砥はもったいないですね。細長い型があれば安くて済みます。
クセ物の刃物は柔らかい仕上砥でよい、という人がありますが、やはりある程度堅い方が良いです。点で刃物が砥石とあたりますから圧力が直線の刃物より高くなるはずですから。
右は内丸(内ハガネ)の刃物の甫(ウラ)を研ぐ内曇(うちぐもり)のコッパ。

仕上砥も、やはり浅めと深めの2丁。

柳刃状のトウの中砥での研ぎ。
なにも見えないので右の画像は左手を外してみました。
左右に傾けながら刃全体を研ぎます。

柳刃状のトウの仕上げ研ぎです。ウラは別の平らな仕上げ砥を用います。
私は彫刻刀の柄を着脱式にしています。

内丸のノミを研いでます。やはり左右にローリングさせながら全体を研ぐ。右画像は左手を外してみたところ。

内丸の仕上げ研ぎです。
右は内曇のコッパでウラを研いでます。私は縦方向に動かします。
コッパには符丁が書いてあり、ノミごとに使う石が決まってます。
内丸のノミはウラがヒケてしまうと、いくら仕上げのコッパをあててもウラヒケが取りきれないので、たまに1000#ぐらいの中砥の砥汁をつけて研いだ方が切れるようになります。




ついでに外丸のノミの研ぎを、ご覧に入れます。
外丸のノミを頻繁に使う方はご存じと思いますが、このノミを平らに研いで使うと横に滑ってしまって非常にやりにくいです。
刃先を直線にする、という意味ではなしに、少しでも凹に研ぐと調子よく使えます。
並んでる砥石は、持っている外丸ノミの大中小に合わせた中砥と仕上砥です。
手前のコッパは2分の外丸ノミ用。
砥石は、研ぐ刃物の幅より少し狭く作るのがコツです。

2分の外丸ノミの中砥での研ぎです。横の金属片はダイヤモンド・ヤスリの小片でツラ直しに使います。このダイヤモンド・ヤスリ・の小片は仕上砥で名倉の代わりにも使ってます。

8分の外丸の叩きノミの中砥での研ぎです。中砥は2丁ずつ組で下面でお互いをツラ直しします。やはり縦方向は凸です。

2分の外丸ノミの中砥での研ぎ終了。

2分の外丸ノミの仕上げ研ぎです。
右は外丸用のウラ研ぎ用の仕上げ砥で、こればっかりは柔らかい石でいいようです。中が凹んだままにしてます。この上でローリングさせながら研ぐのですが、石が横方向に凹にならないように、刃先をはみ出させて研ぐことを頻繁にやります。

2分の外丸ノミが研ぎ上がりました。このようにクセ物の研ぎの仕上がりはギラギラの見栄えの悪い研ぎになりますが、これで良しとします。

以前、朝倉彫塑館の所蔵品の内丸ノミの研ぎを任され、一本ずつ専用の中砥、仕上砥を作って、まったく刃物と砥面を合わせる、ということをしたのですが、とても不合理な研ぎであることが分かりました。




8分外丸ノミを砥面にぴったり合わせてみました。ただし中砥です。